2013年12月30日月曜日

富山でTEDxをやる準備:プレゼンの起承転結?

富山でTEDxをやる組織を作るために、TEDの勉強会でもしようかという企てに加担することにした。
TEDのトークを見て、みんなで話しをしようよというもの。
最後に振り返りついでにプレゼン講座をして、参加者する人を徐々に洗脳しようと目論んでいる。

今回のネタにしたのは、ジュリー・バースティン「創造力を育む4つの教訓」。
http://www.ted.com/talks/julie_burstein_4_lessons_in_creativity.html

このプレゼンをネタに、聴衆を「掴み」、掴んだ上で自分の伝えたいことを聴衆に「渡す」そんな行為に着目してみよう。という内容で喋ったので、とりあえずまとめておく。

プレゼンテーションで物語を語ろうとすることは非常に非効率だ。構成が不味ければ、だれてしまって何も伝わらなくなってしまう。
起承転結に当てはめている様に見える、なんの魅力も無い通り一遍の説明が世の中にあふれかえっていてもなお、起承転結が重要と信じて疑わないのは何故か、自分に問うたことはあるだろうか。
ジュリー・バーンスティンのプレゼンを、その背景に物語があるという前提で見てしまうと、全く混乱することになる。
彼女はなぜあの順番で事例を紹介したの?一連のストーリーはあるの?
ストーリーを見いだす努力はしても構わないし、事例の並びにも巧みさは感じられる。ただし、このプレゼンテーションは、例示と主張を繰り返して、単純で力強い文脈を確実に浸透させようという構造になっているので、ただ言われたことを素直に聞くだけで良い。
実際に、プレゼンテーションの要素を分けて書き出してみる。

【枕】
1.器を上から写したスライド
一瞬何かわからない美しい写真。
大学時代に作った楽焼きの陶器を今も机の上に置いているという画像の種明かし。つまり、小さな「何?」という興味をひくところからの導入。

2.日本の楽焼きについての解説
「不完全さ故に愛されてきた」というギャップの提示。
ここで、日本では竃から取り出してまだ赤い器を緑茶に漬けるが、アメリカでは大鋸屑にまぶすため煙の匂い服で帰宅するという余談は、後の伏線になっている。
楽焼きによる創造の過程により、創造にはコントロールできるものと受け入れざるを得ないものがある。

3.器を落としてみせる(失敗)
器を落としてみせるが、器は割れない。本来は割れる筈だったと本人は言っている。
割れても割れなくても、創造にはコントロールできるものと受け入れざるを得ないものがあるということは伝えられるパフォーマンス。
経験を受け入れることが必要になる。

【例示】
4.インドで育った映画監督の談話
校庭にあふれる情熱と大麻。突飛に感じられる組み合わせ。
スピーチでの紹介だけでなく、本人の談話を再生。
日常の中にも、ひらめきを受け入れるチャンスはある。

5.重度の識字障害の作家
識字障害の作家。イメージのギャップ。
スピーチでの紹介だけでなく、本人の談話を再生。
課題を受け入れる。困難の克服。

6.ラス・メニーナスから生まれた現代美術
有名な考察が存在している絵、その考察と重なる発見から生まれた創造。
スピーチでの紹介だけでなく、本人の談話を再生。
絵画という技法から、立体に移行する探求。
絵画ではできないと感じた自らの限界を受け入れて、更に前進しての創造。

7.9月11日以降の現場の記録写真
壊滅から再生を信じること。9月11日のテロ現場の記録写真。
スピーチでの紹介だけでなく、本人の談話を再生。
喪失を直視し受け入れる。「撮るしかない」という確信とこだわり。
家族のところに帰ったときに、服に付いていた煙の匂いについて言及。2のパートので服に付いた煙の匂いとの呼応による強調。

【まとめ】
8.経験、課題、限界、喪失
創造力は人にとって不可欠だという主題の提示。

【まとめ2】
9.割れた後、金継した日本の器
壊れてなお、作られたときよりも美しさを増すこと。
創造と破壊。コントロールと受け入れ。人はこれらの循環の中に居るという主題の強調。


このスピーチの構成を、枕、例示、まとめ、まとめ2と4つのくくりがあるから起承転結だとか、まとめはひとつと考えて3つのパートに別れるから序破急だというのはナンセンスだ。
このプレゼンテーションは「簡単な導入」「例となるスライド」「本人の談話」「主題の提示」という構成で繰り返されている。
ギャップやエキゾチックな組み合わせで好奇心を刺激し、主題の提示を繰り返す。つまりは聴衆に対して「掴み」と「渡す」を繰り返している。
彼女はひたすら同じメッセージを繰り返し、例を変えながら主張を強調しているので、敢えて物語的な時間軸があるとすれば、それはジュリー・バースティン自信がこれまでの多くの人々にインタビューしてきた事実がそれにあたる。彼女のキャリアは現在も継続しているので、スピーチの中では完結しない。

このスピーチには、人と対面して、何かを渡すときの動きに似た以下の構造が見て取れる。

1.ものを渡したい相手に声をかける。
2.相手がこちらを見たのを確認する。
3.相手に渡したいものを差し出す。
4.相手の手が出たのを確認してものを渡す。

注意を引き、主題の裏付けになる誰かの声を聞かせ、主題を述べる。
話者となって人前に立つ人間と聴衆の関係は常に、個対多だろうか。
スライドやスピーチを組み立てるにあたって、誰かが言っていたことに盲従するのではなく、自分自身が聞く人に何を渡すのかに気を配りながら喋るイメージで構成すれば、伝えたいことはよりシンプルに伝わる筈だ。