風呂場にずっと、接合部分に錆の浮いたシェービングクリームの缶がある。
いつからここにあったものか記憶にないが、この缶を使っている最中に、なにかの理由で新たなシェービングクリームが家に持ち込まれ、その都度利用が中断されてきたものだ。
中断の理由は様々で、旅行先で買ったシェービングクリームを使い切るためだったり、試供品を貰ったり、なぜか何処かから新しいものが持ち込まれたり、そうしているうちに、缶が錆ていき、切れたものと勝手に勘違いされて新しいものが補充されることもあった。
結局何年使い続けたものかわからないが、このシェービングクリームは中身が切れることなく使い続けられ、そしてその見てくれや、代わり映えはしないが、その時々の理由で別のシェービングクリームによって利用が中断され続けた。
今日も、風呂場で泡を出してから、そういえばこのシェービングクリームは切れないままだが、一体どうなっているものかと思い、改めて手にとって振ってみたところ、どうも最初に泡を出すために手に取った時よりも格段に軽く感じられた。
振った瞬間には中身のある様な感触があったのに、改めて泡を出してみると、弱くガスが出るだけで、全くそんな気配は無かったが、ついに使いきってしまった様だ。
日常から魔法が消える瞬間というのは、決まってこういう風だと改めて知ることになった。
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