2015年10月21日水曜日

塔の中の炎

むかしむかしあるところに、ずっとずっと消えない炎がありました。
炎は、どれだけの大きさかもわからないほど、途方もない大きさの亀の背にある塔の中で、世界の始まるなお前から、ずっと燃えていました。
これが誰のものなのかについては、多くの見解があり、世界に文明が登場するようになってからこのかた、多くの宇宙人の文明も含めて、様々な意見が交わされ、争いも起きていました。
それこそ、気が遠くなるほど長く、いろいろと話し合われていますが、亀と塔と炎は多くの文明にある程度の痕跡が見られ、真面目に話し合いをすればするほど、全く埒があかなくなって誰もが困り果てるのでした。
そんなことがずっとずっと続いていたのですが、やがて、話し合いにこなくなる人たちが出てき始めました。そんなときは決まって戦争の準備をしていたりするので、また戦争になるのかと皆が肝を冷やしましたが、全く音信がなくなってしまったので、調べるとこれまでとは様子が違っていました。
話し合いに来なくなった人々は、塔を自分たちのものだと思い詰めるあまり、塔の炎の記憶を失っていて、それが自分たちのものだと考えること自体を忘れてしまっていたのです。
自分たちが住まう惑星が球体であることを発見し、世界の大きさほどもある亀など、どこにも存在の余地が無くなってしまった文明もありました。
そんなわけで、この島には、あらゆる思惑を持つ者は立ち入らず、この場所の存在にもこれ以上関わらない方が良いのではないかと、そんな風に話し合いが決着しました。塔の炎を大切に思いつづけるには、そうするのが一番の様です。
そんなわけで塔の他には、長い争いの後、ようやく復活した草原に住まう蜂や花たちだけを残して、もうだれもそこには近づかないことになったのです。
それからというもの、別々惑星や、時間、世界に住まう人々が会って話しをすることもすこしづつなくなっていきました。
あらゆる灯火が炎から電灯に変わるよりも、ずっと前のお話しです。

2015年10月19日月曜日

庭の秘密

むかしむかしあるところに、月に照らされた噴水の美しい庭がありました。
この庭は、月夜があまりに美しいので、王様が魔法使いに命じて、そこだけずっと月夜のままになっています。
ある日のこと、一人の宇宙人が懐中電灯を携えて、この場所に調査に来ました。宇宙人には魔法のことがよくわからないので、無理もありません。
どんな秘密があるのだろうと、宇宙人は鍵を探しますが、四方八方どこを探しても魔法の秘密にはたどり着きませんでした。
散々探し回って見つけた怪しいものといえば、一本の矢とサイコロ。
宇宙人はとりあえず矢を抜いてみましたがなんにも起きません。宇宙人にはわからないことですが、この庭に魔法をかけたとき、魔法使いはその矢を使って夜と月光を縫いとめたのです。
そして、今の宇宙人の様に、矢を抜く人があっても、縫いとめた力が消えてしまわない様に、魔法の源をどこかの何かを縫いとめているものに、サイコロを振って移動させたのでした。その時出た目は「五」。
魔法使い本人にも、どこに行ったかはわかりませんが、魔法を続けさせる力は、この矢から五つ離れた、何かを繋ぎ止めているものに宿っていて、それがなくならない限りは、この庭の夜も縫い止められたままです。

今はどうなってるかって?魔法が消えたという話しは聞きませんから、ちゃんと探せば世界のどこかに庭は残っているはずです。

2015年10月17日土曜日

長い移動をどうにかするアイディア

むかしむかしあるとろに、一匹の亀がいました。
亀はある日、どうしてもエジプトに行かねばならなくなったので、とりあえずリンゴを背中に乗せて出かけました。
亀はそれなりに急ぎの用事だったので、はやくエジプトに行きたかったのですが、歩くより他に手立てがありません。
とりあえず、いつもの人間に相談でもしたら、なにかいい知恵が降ってくるかもしれない。
亀は知り合いの男を訪ねて、エジプトに向かうことを告げ、早く着く知恵はないかと男に聞きましたが、男は困った顔です。
「人間ならパッと移動する方法を知ってると思ったんだけどなぁ」
「そもそも亀がエジプトに用事と知っただけで、普通の人は変に思うよ。その方がいろいろ余計な邪魔が入りそうだよ」
そんなものなのかと、亀は衝撃を受けましたが、とりあえず男とリンゴを食べてお茶にしてから、本当に本式にエジプトに向けて出発しました。
昼過ぎに出たんだから、まだ4時間も経ってない。そんなに簡単にいい考えを思いついたり、誰かのいい考えにありつけたりするわけがないか。
出鼻をくじかれて旅路を閉ざされた気分ですが、それはあくまで気分の話し。万年の寿命のうちならば、たどり着かないなんてことはないと亀は知っていましたから、ただ向かうだけのことです。

2015年10月16日金曜日

世界が変わってしまうほどの勝手な大勝負

むかしむかしあるところに、一本の木がありました。
その木の下で、時々、月と魚が大きな勝負をしました。
その頃、魚は月になりたくてどうしようもなく、月は本当にやさぐれていて、とてもたちの悪い博打打ちでした。
たくさんの勝負の結果、今、皆さんが暮らしている日常があるわけですが、どっちがなにを賭けた結果こうなっているのか、細かいことまでは記録に残っていません。
でも、月と魚の勝負のせいで、人生には秘密の鍵めいたものがちらつく様になり、地球上では磁石が北を指し示し、矢を放った後は方向転換ができない。そんな運命の決まりごとができてしまったことは確かです。
他にもたくさんの法則が勝手に変わってしまいましたが、すっかりそれが普通になってしまって、本当の大昔はもっとましだった筈だったのに、誰も文句を言わなくなってしまいました。
今はもう、月と魚が大勝負をした木は枯れて跡形もなくなり、月は何かのきっかけで博打をやめ、魚も水から出る様なこと自体、概ね無くなっています。
やめるなら元に戻してほしいものですが、賭博とそれにまつわる運命の法則が、無かったことにするというのを許さない様です。

2015年10月15日木曜日

困ったデタラメ

むかしむかしあるところに、魚の木がありました。
魚が木になっている様子なんて、なかなか想像できませんが、そこで実った魚は決まってある季節の雷雨の日に木から落ちて、とにかく地面に雨水のあるうちに、どうにかもがいて近くの川に入り、それからは普通の魚の様に暮らします。
さすがに、こんな常識外れの木を目の当たりにして、心がおかしくならずに済んだ人は少ないので、この木に近づくことは全くお勧めされていません。
とはいえ、『魚の木近寄るべからず』と書いては逆効果。好奇心に勝てる人は稀です。
そこで考えられたのが、魚の木を遠巻きに囲む様に作られた公園の遊歩道です。
この遊歩道のタイルは、なんとなくこっちかな?と思わせる、うっすらと矢印めいた調子の模様になっていて、人は我知らず木とは逆向きに誘導されていきます。
これも、あからさまに矢印などの模様にすると、逆の方向に興味を示す天邪鬼が多く登場したので、長い時間をかけてこんな形に工夫されたものです。
リンゴの木ならまだしも、あんなデタラメなものはとにかくやめにしてもらいたいものだ。
木の近所のみんなは、そんな風に言って困り顔です。
こういうとんでもないデタラメというのは、いざ身近なことになると、なかなか困ったものの様です。

2015年10月14日水曜日

魚とピラミッド

むかしむかしあるところに、一匹の魚がいました。
ある夜のこと、その魚は、宇宙との交信係りとして、寝ずの番をしていました。
魚たちはこの百年、大宇宙連合と交信する地球の代表の生き物として多くの功績を残しています。これは特に不思議なことでもなんでもなく、人類が誕生する以前から、魚たちは長い間地球で生きていましたし、その間に爬虫類や両生類とともに、広い宇宙に住む他の知性と交信する様になり、それが今も続いているだけのことです。
魚がどうして?と思うかもしれませんが、この広い宇宙において、知性というのは、人がわかったつもりになっている以上に広く深く、境界のわからないものなのです。
いつもは特になんでもない宇宙との交信で終わるのですが、その夜は、宇宙人から緊急の報告がきてのんびりしていられなくなりました。地球に大きな流れ星が激突しそうになっていて、たいへん危険なことになっているというのです。
これは一大事。魚は大急ぎで他の魚たちに地球の危機を知らせました。
時間は刻一刻と迫っていますが、魚たちは力を合わせ、慌てることなく流れ星の様子をよく観察し、ピラミッドから特殊な磁力を発射して、どうにかギリギリのところで、流れ星の軌道を逸らすことに成功しました。
ビラミッドはそもそも、地上に大きな影響を及ぼせない生き物たちが、大宇宙連合にお願いして、いろいろ工夫して建てた地上の建造物で、人間が思いもよらない、いろいろな働きをするのでした。
そんなわけで、魚たちのおかげで、地球はまたひとつのピンチを切り抜けることができました。
でもこれは、いつもの三日月の夜、皆さんが眠っている間に起きたお話し。ご存じないのは、やむをえないことですね。

2015年10月13日火曜日

言葉の裏側の木

むかしむかしあるところに、といっても地上のどこかは秘密ですが、一本の木が生えていました。
いいえ。その木は今も、確かに世界の何処かに生えています。
その木は、あらゆる言葉の裏側にあって、全ての木に似ていて、どの木とも全く違う。ただひとつの木です。
その木の根元には、かつてその木にたどり着くことのできた誰かの足跡がひとつ残っていますが、その人物がどこの誰なのかもわかっていません。
多くの人々が、その木を目指して無謀な冒険に出たり、その木を我が物にしたら世界を手に入れられるという、根拠の無い誘惑に駆られて自分を見失い、沢山の愚かなことを重ねていますが、木の場所の手がかりは未だに多くの謎に包まれています。 それでも、人が言葉を話すからには、確かに世界の何処かに木はあるのです。
ひょっとしたら、たった今、木の存在にとりつかれたあなたのお友達から、木を探す冒険へのお誘いの電話がかかってくるかもしれませんが、これまでこの木に関する野心の果てには、かならず悲惨な末路がついてまわる決まりになっています。
寝たふりをしておくのが一番かもしれませんね。

2015年10月11日日曜日

散歩

むかしむかしあるところに、ホテルの最上階を住まいにしている男が居ました。
男は、心の悪魔と上手に話しができるおかげで、損得の計算が鋭いほど上手く、磁石が砂鉄を吸い寄せる様に、お金をたくさん吸い寄せることができます。
そんな男が、老人なって杖をつく様になってからのことです。何気なく散歩に出かけた雨上がりの昼下がり、立ち止まってふと空を見上げると虹が出ていました。
特に不満のない一生だが、この虹のせいでいまさら何かを感じることがあるとしたら、何があるだろうかと、男は考えました。
この虹の向こう側を考えたことがあっただろうか。多くの鍵があり、鍵穴があり、どこかに続く扉があったかもしれない。
どれだけの扉の鍵を見つけただろうか。どれだけの扉があっただろうか。
男は、これまで生きてきた中で、鍵や扉と思えるものを空想しました。鍵しかなかったもの、扉しかなかったもの、開いた扉、開かなかった扉。確かに多くは開かずじまいで通り過ぎてきましたが、それでも男は今ここにこうして生きていて、空を見上げています。
虹はどんどん薄くなっていき、男は空想をやめ、散歩も中止にして部屋に帰ることにしました。

男は、今すぐに試すことができる鍵と鍵穴を確かめずにはいられなくなったのです。

2015年10月9日金曜日

月を見る会のはじまり

むかしむかし、あるところに大きな窓のお屋敷がありました。
そのお屋敷の主人は、月の見える夜にはずっと月を眺めることを、なにより楽しみにしていました。
ある夜のこと、家の主人がいつもの様に月を眺めていると、遠くの道を急ぎ足で歩いていくクマの後ろ姿が見えます。
普段は空しか気にならないのですが、その急ぎ様といったらありません。
あれはいったいどうしたことだろう。
とはいえ、すごく遠くを急いでいる姿が見えるだけなので、もう声をかけて止めることもできず、確かにクマだとはわかるものの、山向こうのクマだか笹谷のクマだか、クマがわからないので電話をかけてみたり、磁石で引き寄せることもできません。
それにしても、クマがあんなに大急ぎでどこかに向かうなんて、聞いたことがありません。しかもその方向にあるのは、なんにもない小高い丘だけのはずです。
月は眺めていたいですが、そろそろ窓からは見えなくなってしまう時間です。主人は思い切って、クマの後を追いかけてみることにしました。
やっぱり、道はただ思った通りの丘の方に続いています。なんにもなくて、そもそも誰も行かない場所です。
ところが今夜は、そこにテントを見つけました。テントの脇の長椅子で、クマがのんびり月を眺めている様です。
テントの脇に、長椅子がもうひとつあります。空には素晴らしい月が光っています。
こうなってはもう、声をかけるしかありません。
「お見かけしたところ、あなたも月を見るのがお好きな様ですね」
主人が声をかけると、クマが起き上がり、声をかけてきたのが窓のお屋敷の主人だとわかると、びっくりして椅子から転げ落ちました。
クマはあたふたしながら、きをつけをして、しどろもどろに主人に答えました。
「実は、あなたがずっと月を見ているのを不思議に思って、自分でも見る様になったら、月を見るのがすっかり楽しくなってしまったのです。私にはお屋敷は建てられないけれど、この丘の上にテントを建てて準備しておけば、一晩中でも月を見ていられることを見つけたので、月のいい夜はここに来ることに決めたのです。今日も、動物たちの会合があったんですが、終わるのが待ち遠しくて待ち遠しくて……。終わってから急いでここにやってきたのです」
二人は改めて月を見上げました。
なるほど、窓越しの眺めも素晴らしいと思っていたけれど、これなら月がでて隠れるまで、ずっと見ていられると、主人も感心しました。
もうひとつの長椅子は、クマがいつか屋敷の主人を招待できればと思って、用意してあったものでした。
屋敷の主人とクマは、時々示し合わせて月を見る会をやることにし、アップルパイや魚のフライで、月を見ながら楽しく過ごす友達になりました。

2015年10月8日木曜日

タワーシアターの蜂蜜

むかしむかしあるところに、高い塔がありました。
その塔を背景にする様な形で劇場がひとつあって、昔ながらの仮面劇が毎晩上演されています。
その劇場の照明倉庫の屋根裏に蜂が巣を作っていました。
蜂たちはせっせと巣を作っても、あまり大きくして人に見つかると壊されてしまうので、ちょっと困っていました。
どうしたら巣をずっとこのままにしておけるのだろう。
羊は言いました。僕らは人間に伸びた毛をあげているよ。君達も、人のそばが良ければ、人になにかあげたらいいんじゃないかな。でなけりゃ山にでも行ったら?
なるほど、蜂は考えました。 ぼくらにあげられるのは、蜂蜜ぐらいかしら……。
蜂たちは相談して話をまとめ、塔の主人と劇場の支配人ところに真っ直ぐすっ飛んで談判に行きました。
羊たちが食べる草に、花の咲く草の種を混ぜてほしいということ。たくさん蜂蜜が取れれば、分け前をあげること。その代わり、巣を壊さないこと。
蜂たちはドキドキしていましたが、いざ話をしてみると、案外さっさと話しは折り合いがつきました。
時代は移り変わり、塔はビルに変わり、劇場は無くなってしまいましたが、蜂たちは今もせっせと蜜を集め続けています。かれらの蜂蜜はとても評判が良く、その辺りでも、五本の指に入るほどの名物になっています。
これが、有名な『タワーシアターの蜂蜜』のお話しです。いつか機会があったら、パンに付けて食べてみてはいかがでしょう。美味しいですよ。

2015年10月7日水曜日

ママの正体は宇宙人でスナイパー

むかしむかしあるところに、若い頃、宇宙をまたにかけるスナイパーをしていた、普通のママが居ました。
地球のみんなには秘密ですが、ママの正体は、実は宇宙人でなのす。ママの大きな目がなによりの証拠ですが、それは、もともとの姿が宇宙人だからです。
ママが人間の姿になったのは、ママがまだスナイパーだったころの冒険がきっかけでした。
とある宇宙の果てに、大きな塔がありました。この塔の頂上で何かをすれば、あらゆる願いが叶うというのが、宇宙人たちの間で噂になっていました。でも、この塔の入り口には鍵がかかっていて、ちょっとやそっとでは中に入ることもできないのです。
ママは、ものすごい冒険の末に、この塔に入る鍵を見つけていたので、塔の門番が驚きのあまりあんぐりと口を開けているのをよそに、さっさと塔の中に入ってしまいました。
塔をのぼっていくと、頂上にはとても不思議な部屋がありました。
その部屋は、真ん中に大きな泉がこんと湧いていて、噴水になって水を吹き出しています。
水には、どこから取ってこられたのでしょうか、たくさんのリンゴが浮かんでいました。
どこからか現れた影の様な謎の生き物が、ママに言います。
「そのリンゴを食べた数だけ、おまえの願いは叶う。叶うけれども、願いには願ってもいないこともついてまわる」
影はママにぐいっとサイコロを差し出します。
「願ってもいないことは、俺が代わりに食ってやることもできる。そのサイコロを振って、出た数だけのリンゴを食べて、同じ数の大事な思い出を俺に差し出せ。そうすれば、同じ数の願ってもいないことも食ってやろう」
でも、ママには話し合いの余地は全くありませんでした。
「リンゴは一個だけでいい。それを食べて人間の姿になって、死ぬまで人間として地球で暮らす。願いはそれだけだから、後の願ってもいないことも全部自分で引き受ける。おまえにやるものは何も無い」
影は黙ったままゆらめいていました。ママはリンゴを食べて人間になり、地球に来て結婚して子供を産んで、ママになったのでした。

それにしても、こんなお話、本に書いてあったとしても誰も信じないでしょうね。
※血パンダの女優、尾島さんが宇宙人がどうしても私の顔に見えてしょうがないというので、じゃぁ次回宇宙人の絵が出たら、尾島さん大冒険でと安請け合いしたところ、約束した次の日に宇宙人が出たので、めでたく尾島さん大冒険。スナイパーは彼女のハンドルネームからいただいております。


2015年10月6日火曜日

大王の墳墓

むかしむかしあるところに、一人の気のいい男が居ました。
ある日、男のところに宇宙人が訪ねてきて言います。
「これから我々は、幾つかの橋を正確な順番でまわり、古代の大王の墳墓に行かなければならない」
「どうして?」
「それは、今はわからなくていい。さぁ、出発しよう」
「橋を渡る順番はわかってるの?」
「それも、今はわからない。とにかく行ってみなければ、なんにもわからない」
わからないことだらけのままですが、男は宇宙人と一緒に出かけることにしました。
いくつもの川を渡り、幾度も古い王様のお墓を行き来しますが、なにもわからないし、なにも起こりません。
散々うろうろして、もうそこを通るのも何度目かになる、ある橋を渡ろうとしたとき、男が宇宙人を止めました。
「待って!よく見て!」
「7かな?数字の7に見えない?」
「それがどうしたんだ?」
「この橋は、7番目に渡る橋かも」
橋の欄干をよく見ると、確かに小さく「7」に見えなくもない数字が彫ってあります。
「なるほど」
それから二人は、方々の橋で数字を探し回りました。
いろいろ探したあげくに、男がため息をつきます。
「困ったぞ。数字はたくさん見つけたけど飛び飛びだし、数字の小さい順番通りだとしたら進み方がめちゃくちゃだ」
その通り。この辺りの橋はくまなく探しましたが、数字はきちんと順番になっていませんでしたし、数字の順番で橋を渡るとしたら、普通に道を歩いてはいけません。

二人は一旦男の家に帰って、いろいろ考えることにしました。
発見はありましたが、いろいろわからないことだらけのまま。冒険はまだまだ始まる様子がありません。

2015年10月5日月曜日

秋ですよ。秋。夏が終わるというのは素晴らしいですよ。なんせ歩いても汗かかないし、猫が膝にきても気にならない。

Netfilixはお試しでおさらば。どうにかスーパーナチュラルのシーズン8は見終えた。
キルラキルと、あとなんだっけ。いくつか途中のものはあるけれど、なんやかんやで、Linuxで見られず、Macでも、FirefoxからだとMicrosoftSilverlightのインストールを求められたりと、細かな意見の相違がどうにも埋められなかったもので、これなら音楽の方にお金を出すわということになりました。
そんなわけで、Huluにがんばっていただきたいものですが、なんだかんだでAppleMusicの居心地が良くてかなわんです。
ひょっとして、動画配信なんてものは俺にとって全く不要なのではないかと、そんな気もしてきてますよ。娯楽とというか、暮らしの潤いとしては音楽があればいいんじゃないか?
LastFMが戻ってくる兆しも無いわけで、もうこれは致し方ないかしらと思い始めております。朝っぱらから、一昨年なんとなくスルーしたヴァネッサ・パラディのアルバムに行き当たりまして、あら。スルーして申し訳ないと、そんな気分。
Linux使ってる間も、傍でアンプにつないだMacから音が出ていればいいわけで、いや、Linux版のiTunesお願いします。

改めて読む

先日気晴らしに漫画でも拾うかと思って行った中古本屋で、ゲド戦記の1巻から4巻と外伝を一冊100円で拾いまして、子供の頃になんとなく読んだ記憶があるんですが、どうもピンとこなくて印象が薄かったものの、読み直そうにも微妙に記憶にあるのであんまりその気になれないまま、多くの月日が流れておりました。
そんなこんなでル・グイン自体が「いつかね〜」な扱いだったわけですが、この度めでたく読み始めまして、概ね面白く読んでおります。しかし案の定、記憶が微妙に邪魔ですね。なにがピンとこなかったかといえば、当時の自分にとってはグダグダと説教臭かったんだと思い出しました。そのせいで、ル・グイン自体も敬遠してたんですね。もう大人なんで、大丈夫です。
あんまり再読しない方なんですが、P・K・ディックとか、もう一回読んでおく方がいいのかという気分になっております。
先日からペルシダーシリーズ読みたいんですが、きちんと読んでいない空想冒険小説なんかを漁るか、なんとなくそんな気分ではあります。
こっち方面、面白いけど読んだ?読んでなかったらこの辺から手をつけてみなよとかあれば、お誘いください。
そういえば子供らに読み聞かせているホビットの冒険が、ついにゴクリとのなぞなぞのシーンを迎え、久しぶりに山場に差し掛かって食いつき過ぎて力つきて寝てしまうという現象を目撃。そういう読書体験がしたいものです。

許可証

むかしむかしあるところに、何についての許可証なのか誰も知らない一枚の許可証がありました。
その許可証は大昔から沢山の人の手を渡って、今に伝わっています。
かつては、アイザック・ニュートンが木から落ちるリンゴを見て、万有引力についてひらめいた時に彼の手元にあり、マジシャンのフーディーニが肌身離さず持っていたとも言われています。
マーケット・ガーデン作戦で生き残った英国軍兵士の所持品だったり、高名な日本人の冒険家が、ついに戻らなかった旅の最初の野営地から友人に贈ったという逸話もあります。
人々はこの許可証を注意深く観察し、話し合いました。杖のシンボルのようなものが見て取れるので、もともとは何か医術に関わるものではないかと推測する人も居ますが、全くはっきりしたことはわかりません。

許可証そのものを、磁気をはじめ、ありとあらゆるもので分析してみても、なにがなんだかわからないことだらけ。結局のところ、何について許可している許可証なのかも、未だに謎のままです。

2015年10月4日日曜日

橋の向こうの宇宙人

むかしむかしあるところに、小川があって、誰も渡らない橋が一本かかっていました。
その橋の向こうには、噴水のある小さな公園と小さな家がありましたが、橋を渡って公園に行く人は誰も居ません。
みんなが公園に行かなくなったのは、小さな家に宇宙人が住んでいるからでした。
この宇宙人と会うと、人はなぜか自分の心に持っている炎を見てしまいます。それだけなら構わないと思うでしょうが、炎に照らされてできてしまう自分の影からの声を感じ、影の姿を見ることになるのです。
どんな人も影は必ずできてしまいます。普段は全くそんなことを考えない、気にもならないという人でも、影を通じて、自分でも思ってもみなかった自分を見てしまうのです。不思議なことに、影は黒い影のままですが、自分のことだからでしょうか。どんどんいろいろなことが伝わってくるのでした。
そんなわけで、誰も宇宙人には会いたくありません。

町の人たちは、宇宙人に町から出て行ってもらいたくて、飛行機のチケットまで用意しているのですが、宇宙人に会って、その話しをする勇気のある人は、誰一人居ませんでした。

2015年10月3日土曜日

思えばこういうイージーなネタでエントリー起こせるとか、便利なことこの上ないじゃないか。

むかしむかしあるところに、小さなテントで羊と暮らしている一人の少年が居た。
ある三日月の夜、少年はこんな夢を見た。
この世の何処かにある塔のてっぺんに、世界のあらゆる方位を支配する天秤とサイコロが置かれていて、誰かが、おもりを置いて天秤の均衡を変えたり、新たに賽の目を変えたら、世界の様子がまるで変わってしまうのだ。
少年は目を覚まして、テントから出て夜明けの空を見る。
少年は考えた。テントの外に広がり、果てがないと思っていた草原の彼方に、ひょっとしたら本当にそんな塔が建っていて、世界を変えてしまう誰かが足を踏み入れるかもしれないと。
羊たちを追いながら、少年は幾日か、その塔のこと、天秤やサイコロのことを考え続けた。



2015年10月2日金曜日

村の祭りと連休があったと思ったらもう10月ですが、なんだかこのところ無目的にStory Cubesを転がしております。

連休初日が村祭りでして、朝の8時から翌朝の6時まで獅子舞ですよ。出たり入ったりではありますが、獅子舞にひっついて歩いておりました。
もうね、人手不足が深刻で、来年から練習に加わって獅子頭まわさないかという話しが出る始末、私、地元を長く離れていたので、一部のふりしか覚えていないどころかひたすら怪しいんですが、さてまぁ、これは来年の話しですな。
連休はもう、食い物と酒を持ってきなはれ、こちら火を絶やさず待っておりますという方式で、だらだらBBQをしてすごしておりまして、筋肉痛と胃もたれの日々でした。

Rory's Story Cubes

アマゾンで見かけて、ちょいと興味が沸いたのでポチったんですが、これがなんとも面白いのです。
サイコロに、数字の代わりに絵が描いてありまして、そういうのが九つあります。そいつを振って、出た絵を元にお話しを作るってのが基本的な遊び。
いろいろ勝手に考えて遊びなはれというのも推奨されております。



で、これで「むかしむかし……」という語りだしでお話しをしなはれということなんですが、子供らと遊んでみたところ、非常に食いつきがいいというか、バカウケでした。
とりあえずお話しを「むかしむかし……」から始めろということになると、刷り込みは怖いもので、さらっと「○○が居ました」と続き、話しはすんなり転がり出します。
ただ、なんだかんだで「旅に出る」「お供の何かと一緒になにかする」というパターンに陥ってしまいがちなんですが、これはなんというか、難しく考えたら負けというか、行きあたりばったりで苦笑いが一番かしらと見ています。
ワンパターンになって、どうしても面白くなくなってきたら「旅に出る」のは禁止っすね。
大量にくだらないお話しを粗製濫造していて、なんかの拍子に、思わぬいいオチがつくと、思わず「おー」と声が出ます。子供とやっていて、本人も思わぬいいオチが付いて拍手してしまうこともありました。
何種類か追加セットも発売されている模様。暫くは楽しく遊べそうです。