むかしむかしあるところに、魚の木がありました。
魚が木になっている様子なんて、なかなか想像できませんが、そこで実った魚は決まってある季節の雷雨の日に木から落ちて、とにかく地面に雨水のあるうちに、どうにかもがいて近くの川に入り、それからは普通の魚の様に暮らします。
さすがに、こんな常識外れの木を目の当たりにして、心がおかしくならずに済んだ人は少ないので、この木に近づくことは全くお勧めされていません。
とはいえ、『魚の木近寄るべからず』と書いては逆効果。好奇心に勝てる人は稀です。
そこで考えられたのが、魚の木を遠巻きに囲む様に作られた公園の遊歩道です。
この遊歩道のタイルは、なんとなくこっちかな?と思わせる、うっすらと矢印めいた調子の模様になっていて、人は我知らず木とは逆向きに誘導されていきます。
これも、あからさまに矢印などの模様にすると、逆の方向に興味を示す天邪鬼が多く登場したので、長い時間をかけてこんな形に工夫されたものです。
リンゴの木ならまだしも、あんなデタラメなものはとにかくやめにしてもらいたいものだ。
木の近所のみんなは、そんな風に言って困り顔です。
こういうとんでもないデタラメというのは、いざ身近なことになると、なかなか困ったものの様です。
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