2015年10月8日木曜日

タワーシアターの蜂蜜

むかしむかしあるところに、高い塔がありました。
その塔を背景にする様な形で劇場がひとつあって、昔ながらの仮面劇が毎晩上演されています。
その劇場の照明倉庫の屋根裏に蜂が巣を作っていました。
蜂たちはせっせと巣を作っても、あまり大きくして人に見つかると壊されてしまうので、ちょっと困っていました。
どうしたら巣をずっとこのままにしておけるのだろう。
羊は言いました。僕らは人間に伸びた毛をあげているよ。君達も、人のそばが良ければ、人になにかあげたらいいんじゃないかな。でなけりゃ山にでも行ったら?
なるほど、蜂は考えました。 ぼくらにあげられるのは、蜂蜜ぐらいかしら……。
蜂たちは相談して話をまとめ、塔の主人と劇場の支配人ところに真っ直ぐすっ飛んで談判に行きました。
羊たちが食べる草に、花の咲く草の種を混ぜてほしいということ。たくさん蜂蜜が取れれば、分け前をあげること。その代わり、巣を壊さないこと。
蜂たちはドキドキしていましたが、いざ話をしてみると、案外さっさと話しは折り合いがつきました。
時代は移り変わり、塔はビルに変わり、劇場は無くなってしまいましたが、蜂たちは今もせっせと蜜を集め続けています。かれらの蜂蜜はとても評判が良く、その辺りでも、五本の指に入るほどの名物になっています。
これが、有名な『タワーシアターの蜂蜜』のお話しです。いつか機会があったら、パンに付けて食べてみてはいかがでしょう。美味しいですよ。